#日記 Day10

あれは一か月ほど前の出来事だっただろうか。
姉の会食に同伴した日の帰りに寄った個人経営のバーでの事だ。
そこはゲイカップルで経営しており、店内は薄暗く水晶や、アクアリウム、骨董品などで埋め尽くされていた。
ヒーリング効果を期待しての据置だろう。
体感では空気が澄んでおり、都内では味わえない清涼感を醸し出している。
しかし店内は、私と姉しか客はいない。
暇を持て余したカップルに手厚く接客され、談笑をしていると、ふと、カップルの一人が私に対して、
「ねえ、タロット占いしてあげよっか?」と言ってきた。
断る理由もないので、是非、とお願いしたが、其の実、占いの類は信用していない。
信憑性に欠けるからだ。
バーナム効果やらコールドリーディングを利用した心理的現象でしかないと思う。
それを未来透視とするのであれば、甚だ烏滸がましい。
いかにも陰湿な思考を滾らせていたら、やっと結果が出た。
結論をいうと、私は将来を思い悩んでいて、当分、恋愛はしてはいけないらしい。
何故確定的なんだ、と吐露しそうになったが既の所で抑えた。
占ってもらった私が悪いのだが、断る気が引ける気持ちもわかってほしい。
結局、占いは宗教などと同じで自分で答えを導き出せない人のための救済処置であると勘える。
別にそれ自体は構わないのだが、私は私自身で決めた相手の神託しか受けたくない。
そんな相手が現れたらなあ、と常々思う。
いや、実は、過去にいたのだが。
このお話はまた後日。